「硫黄島での新島の形成と過去の活動」

小笠原諸島にある硫黄島の南岸沖では、先月2023年10月より火山活動が活発化し、新島が出現しました。( https://digital.asahi.com/articles/ASRC37643RC3ULBH007.html

現在でも新島の拡大は続いており、標高も50mあまりにまで成長したようです。硫黄島は稀に見る火山活動が活発な島で、毎年20cm 近く縞の隆起が続いています。( 硫黄島|海域火山データベース|海上保安庁 海洋情報部 (mlit.go.jp) )25年前のLandsat 衛星による画像と先日観測されたSentinel-2の画像を見比べると、隆起に伴い海底だった場所が陸地となっていることが分かります。

新島が出現した翁浜は島の右下辺の部分で、気象庁の火山噴火予知連絡会資料によれば、以前より海底で噴火を繰り返していた場所のようです。( 151_1-5.pdf (jma.go.jp) )11月27日にSentinel-2 により観測された画像には成長を続ける新島が映っていました。島は溶岩が海水により固まった岩などから構成されますが、他の陸地と同様に波による浸食を受けて削られます。削られた石や砂も波に運ばれて堆積するため、島のアルファベットの「J」のような形状は、必ずしも溶岩の流出方向や島の隆起を示すとは限らず、この作用も含まれると考えられます。

では、この活動はどれほど長く続くのでしょうか。こればかりは火山に聞いてみないと分かりませんが、一つ言えることは、この翁浜沖での活動は数年前より続いているという点です。

同じSentinel-2 の過去の画像を振り返ると、2022年の夏より同じ場所で、消長を繰り返しつつも変色水がみられることが分かります。

画質はやや劣りますがより以前から観測しているLandsat の観測データでも、古くは2018年から同じ場所で火山活動によると思われる変色水が見られます。

海底での噴火を衛星が捉えるためには、観測日(Landsat は8日に一度、Sentinel-2 は5日に一度)と噴火のタイミングが偶然にも合わさっていて、さらに雲の少ない好天に恵まれないといけませんから、これ以外の時期にも火山活動があったと考えられます。これまでは、ただ海面上に新島を作るまでに至らなかったというだけであり、同じ場所で噴火が繰り返されてきたのですから、当面は噴火が繰り返されると予想できます。また、一度噴火が収まったとしても数か月から一年程度の休止を経て活動を再開する可能性があります。噴火以降も島の隆起が収まったという情報は無いため、より深くからのマグマの供給は続いており、この噴火だけでは消費しきれていない可能性があります。

今後も硫黄島からは目を離せません。