各国で開発中のワクチンってどんなもの?

現在、各国で新型コロナウイルスのワクチン開発競争が激化しています。連日のようにワクチンについてのニュースが報じられていますが、「mRNAワクチン」や「不活化ワクチン」など、聞きなれない言葉が飛び交っていると感じる人も多いのではないでしょうか。そもそもワクチンとはどのようなものなのか、簡単にまとめてみました。

ワクチンとは

ワクチンとは、病原性を失わせた (弱めた) ウイルスやその一部等を接種することで、感染症に罹ることなく身体に免疫を獲得させるものです。

ワクチンには多くの種類があり、例えば以下のものが挙げられます。

  • 生ワクチン:継代(培養)を繰り返して毒性を弱めたウイルスを使う。
  • 不活化ワクチン:ウイルスを薬品で処理して、感染能や病原性を失わせたものを使う。
  • タンパク質ワクチン:ウイルスを構成するタンパク質の一部を人工的に生産したものを用いる。ウイルス自体は使わないため安全性が高い。
  • DNAワクチン、RNAワクチン(mRNAワクチン):ウイルスを構成するタンパク質の一部をコードする核酸 (DNAやmRNA) を用いる。合成が比較的容易な一方、安定性に工夫が必要。
  • ウイルスベクターワクチン:ヒトに対して病原性がない (弱い) ウイルスを利用して、目的ウイルスの遺伝子の一部を体内に輸送する。

コロナワクチンの開発状況

先日承認されたファイザー/BioNTechはmRNAワクチン、アストラゼネカはウイルスベクターワクチンを開発しました。これらは近年の技術革新が可能にした新しい形態の薬で (これをモダリティといいます)、その点でも注目されています。

一方、中国のシノファーム、シノバックは不活化ワクチンを開発中です。不活化ワクチンの歴史は長く、ある意味慣れ親しんだものと言えます。しかし当該ワクチンは、有効性や安全性をアピールする一方で十分にデータを公表しておらず、透明性に懸念が指摘されています。

拙速な不活化ワクチン開発が引き起こした問題といえば、1950年代アメリカの不活化ポリオワクチン事件が挙げられます。当時社会問題だったポリオに対して、大きな期待を寄せられたワクチン開発に際し、一部の企業が不十分なプロトコール(方法)で「迅速に」製造した不活化ワクチンに生ウイルスが残存しており、それを接種した人の一部がそれでポリオ患者になったとされています。

ワクチン競争の現状について気になる方は日経新聞の記事もご覧ください。

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