映画の中のオペラ(後編)

前回の更新からしばらく経ちました。そろそろ新学期に向けて、準備をされているころでしょうか。

今年はオペラ界も値上げ&上演回数削減の年…とはいえ、サブスクなどで気軽に楽しめるオペラもあります!ということで、今回も映画の中のオペラをご紹介します。

3. 登場人物の心に響くオペラ

『プリティ・ウーマン Pretty Woman』(1990)

はすっぱな娼婦ヴィヴィアン(ジュリア・ロバーツ)が、リチャード・ギア演じる金持ちの男主人公との出会いによって「教育」され少しずつ変わっていく、まるで『ピグマリオン(ミュージカル名は《マイ・フェア・レディ》)』のようなストーリー。

物語の後半では、ハイカルチャーの象徴ともいえる歌劇場で、高級娼婦でありながらも純粋な心を持つ《椿姫》のヒロインにヴィヴィアンが感情移入し涙ぐむシーンが。《椿姫》の音楽は、映画のラストシーンでも流れます。

https://filmarks.com/movies/15872

『ショーシャンクの空に The Shawshank Redemption』(1994)

言わずと知れた有名な作品ですが、主人公が無実の罪で収監された牢獄で、囚人たちの心に人間性を取り戻す装置として、《フィガロの結婚》の手紙の二重唱が使われています。この歌は、女声による優雅な二重唱。男性達だけが集まる殺伐とした空間に響きわたることで、その存在感と美しさが際立ちます。

https://filmarks.com/movies/19119

4. オペラ自体が主人公

『フィツカラルド Fitzcarraldo』(1982)

19世紀末のペルーで、名歌手カルーソーの魅力に取りつかれた男が、オペラ座建設を目指す物語。撮影中、次から次に脱落者が出たという過酷な現場だったそうですが、さもありなん…という感じで、特に現地民と共にオペラ座建設のため出航してからは、目が離せない展開です。

https://www.allcinema.net/cinema/19771

『トスカニーニ  Il giovane Toscanini』(1988)

名指揮者トスカニーニの若き日のストーリー。こちらも、南米(ブラジル)でヴェルディのオペラ《アイーダ》の上演を目指す物語です。実はこの映画の監督フランコ・ゼッフィレッリ(『ロミオとジュリエット』の監督でもあります)は、《アイーダ》のオペラ映画化を果たそうとしてなしえなかった人物ですが、この映画でその夢が叶った…といえるでしょうか。

https://www.imdb.com/title/tt0096488/

『カストラート Farinelli Il Castrato』(1994)

オペラの映画と言えばこれ…というほど、オペラ好きならば一度は見ているであろう映画。18世紀に実在した伝説の去勢歌手(カストラート)ファリネッリの人生を題材としています。今は存在しない去勢歌手の声を再現するため、ソプラノとカウンターテナーの歌手の声がミックスされて使われました。

https://www.imdb.com/title/tt0109771/

『永遠のマリアカラス Callas Forever』(2002)

誰でも名前は知っているであろうソプラノ歌手マリア・カラスが、オペラ映画『カルメン』を作ることになったが…映画『トスカニーニ』と同じく、ゼッフィレッリ監督の作品です。カラスと生前親しくしていたゼッフィレッリ独自の視点から綴られる、カラスの実像に迫るフィクションの物語となっています。

https://www.imdb.com/title/tt0274407/

『オペラ座の怪人 The Phantom of the Opera』(2004)

アンドリュー・ロイド・ウェバー作曲のミュージカルを映画化した作品。バレエダンサーのクリスティーヌは、事故で降板したソプラノ歌手の代役を務め絶賛を浴びるのですが…このミュージカル映画では、過去の物語を振り返る形式になっていますが、その過去のシーン冒頭はオペラ《ハンニバル》のリハーサル場面になっています。これは《アイーダ》を想起させるオペラ。そのほかにも、《フィガロの結婚》《ドン・ジョヴァンニ》を想起させる作品が劇中劇として上演されます。なお、この作品は劇団四季のラインナップにも入っているので日本でも観ることができます。

https://www.imdb.com/title/tt0293508/