オックスフォード大学が6~17歳の子供を対象とした臨床試験を開始するワクチンってどんなもの?

新型コロナウイルス制圧に向けて、オックスフォード大学が6~17歳の子供を対象としたワクチンの臨床試験を始めるようです。試験で用いられるワクチンAZD1222は、オックスフォード大とアストラゼネカ社が共同開発した「アデノウイルスベクターワクチン」という種類のものです。

「新型コロナウイルス」ワクチンなのに「アデノウイルス」?

毒をもって毒を制する…わけではありません。このアデノウイルスは、免疫を誘導する物質の「運び手 (ベクター)」の役割をしています。AZD1222で使われるアデノウイルスはもともとチンパンジー由来のものです。それを弱毒化し、E1, E3という遺伝子を欠損させることで人体に入っても増殖しないように改変されています。そしてE1遺伝子の代わりに、新型コロナウイルスのタンパク質 (ウイルス表面にあるスパイクタンパク質) に対応する遺伝子が組み込まれています。

このワクチンを接種するとアデノウイルスが細胞に取り込まれ、スパイクタンパク質が合成されます。そのスパイクタンパク質に対して免疫システムが応答・記憶することで、’本物’の新型コロナウイルスをも攻撃できる免疫が獲得されます。

・AZD1222についての詳細はこちら(CDC)

AZD1222の現状は?

2020年にイギリスとブラジルで行われた臨床試験 (第III相試験) により、AZD1222はCOVID-19発症に対して70.4 %の有効率を示しました。この結果を受けて12月にイギリスでAZD1222の緊急使用が承認されたことを皮切りに、世界中で臨床試験と承認申請が進められています。

また、AZD1222は他の新型コロナワクチン (例えばファイザー/BioNTechのmRNAワクチン) と比較して、安価で普通の冷蔵庫で保管・輸送できる利点があるため、世界のいろいろな地域に普及させやすいと期待されています。

日本では?

日本でもAZD1222の使用に向けて準備 (製造販売承認申請) が進められています。アストラゼネカはイギリスの企業ですが、アストラゼネカから技術移譲された日本国内企業JCRファーマが日本向けのAZD1222原液 (原薬) を製造します。現在、世界規模でのワクチン争奪戦の激化が懸念されていますが、国内企業が製造することで安定供給に繋がると期待されます。